夢の跡

「南海ブックスが閉店するってよ」

東京に住んでいた頃の自分で例えるならば、池袋からアニメイト本店がなくなるような。新宿から世界堂がなくなるような。秋葉原からメロンブックスがなくなるような。
ともあれ個人的には地元唯一の百貨店・そごう閉店よりショックなニュースである。

南海ブックスとは、JR徳島駅西のポッポ街商店街に位置する本屋である。

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公式ツイッターの発表がまだないものの、5/17（日）に閉店のお知らせの張り紙はある。移転は無いのかと希望を捨てられないのでもう少しきちんとした情報を待ちたいが、直営元の他のお店も過去に閉店歴がある事、お店の入るポッポ街も築50年を過ぎ耐震問題が出る等のニュースもあったので、概ね事実と捉えていいのだろう。
何となくだが、いつかその時が来る予感もあったし遂にか…という感想である。それでも徳島県内随一の漫画、同人誌、資料集、フィギュアといったヲタク・サブカル文化の品揃えで他店が勝る所は無く、だからこそ今日まで愛されてきたのだろうと思う。

私が初めてお店に入ったのもそれこそ躊二病…訂正、中学生だった。同人誌、BL、GL、TLという概念の衝撃をそこで初めて教えられた気がする。蔵馬と飛影のあんな本とかクラウドとセフィロスのあんな本とか緋村剣心のあんな本とか。（分からない人は検索…しても閲覧は自己責任でどうぞ）その時点ではまだ発売されてない筈のゲームの同人誌もゲーム発売前に普通に見た。ゲームを遊んだ後で見たらネタが不正解だらけで恐らく作者にとっても黒歴史確定であろう程フリーダムな内容だったがそれはそれで新鮮だった。今同じ事をやったら多分色々と怖い。
兎に角、私の人生に於いて隕石級の衝撃的価値観を知らしめてくれた、それが南海ブックスというお店である。
当時はアニメイトと店舗併設だったので、Gペンやコピック、漫画道具をアニメイトで買ってガンガンやGファンタジー、ゲームの攻略本や漫画の新刊を南海ブックスで読み買いする専らの通い方だった。寧ろ、自宅（当時の実家）の外での遊び方を殆ど知らない子供の自分に取っては本当に数少ない、ちょっと自転車で頑張って行ける距離にある絶好の遊び場だった。
店内にイラスト交流掲示板のようなものがあり、僭越ながら私もなけなしのコピックで描いたイラストを貼って頂いていた事がある。スターオーシャン２やFF8のイラストを描いてドキドキしながら店員さんに渡したのを覚えている。実家に残ってなかったかな。今度行った時に探してみよう。

そんな青春の１頁、いや100頁位にはなるだろう大きな存在が、消える。
本屋が厳しいのは分かる。私も大学以降は徳島を離れたので帰省時にしか足を運べず、徳島に帰ってきても以前ほど頑張って通い詰められなかった。しかしそれでも寂しいものである。 母校が廃校になるような気分だ。

欲しくても手に入らない本がここでなら買えた。例えば。

ゼノギアスパーフェクトワークス。
発行元の倒産により絶版になり2014年に復刊されたものの今なお入手困難な1冊。まぁそれは自分が本を買った後の話なので置いといて。
当時の私は神奈川と東京の境目辺りに住んでおり、京王線に30分乗れば新宿、JR横浜線に15分乗れば八王子か町田に行けたのでその手の本屋に困る事は無かったのだが、それでもこの本はついぞお目にかかれなかった。アニメイトにすらも。そして落胆を胸に帰省した夏休みの来店、あった。
売れているのは知っていた。巻末を見ればその年に20刷と書かれてある。デジタル社会な今なら語るまでも無く、ゲーム書籍としても目玉が飛び出る数字である。いや、売れているからこそ大都会では売り切れ状態でお目にかかれなかったのかもしれないが。今で言うところのコンビニの一番くじが秋葉原では瞬殺されても徳島のそれでは期間中ずっとあるのと同じようなものだったのかもしれないが。
しかし大都会東京でそこまでしても見つけられなかった一冊が、言っちゃあアレだが全国知名度ランキングだいたいワーストな都道府県の本屋には普通に新品で置かれてたという事実。たったこれだけで、私の南海ブックスへ信頼度を上げる要因たりえた。
他にもゼノギアス関連なら同じく入手困難なメモリアルアルバムも普通にその隣に積まれてた。ほんとにありがとうございます。

とにもかくにも、閉店。誠に残念でなりません。しかし長年思い出の場として楽しませてきてくれた事には感謝しかありません。ありがとうございます。
マチアソビのスポンサーもされていたと思うがそこはどうなるのだろうか。いい方向に話が進んでくれるとよいのですが。あわよくば新町のアーケード商店街に移転すればアニメイトにも位置的に近くなり…あれっ元サヤ…なんて事はないだろうか。